カレンダーガール

それはハッカ、これはにっき

春の嵐

  今日は髪を切ったあとに、中高の同級生で予備校を辞めて調理専門学校に通っていた子の卒業制作展に行ってきた。自分がこういう部類に疎いこともあり、あまり期待はしていなかった。そもそも、料理は食べるものなんじゃ...??展示では魅力も半減以下なのでは...と。しかしその思いは一足展示室に足を踏み入れると粉々になった。

 

  はじめに入ったのは製菓の展示。

  綺麗にカーブし光沢を放つ飴細工、カラフルなケーキ、本当に食べられるのか疑うようなキャラクターの数々...。製菓は華やかな機会に立ち会うことが多い故であろう、きらきらした幸せが部屋いっぱいに詰まっていた。

 

  次に和食、洋食、中華の展示コーナーへ。

  製菓はまだテレビで見たことがあるが、思えば食事の展示なんて見たことがなかったかもしれない。部屋に足を踏み入れると、私の中の「料理=食べ物」なんて等式は名もなき展示室で音もなくぶち壊された。コンセプトも様々で想像が作られた創造品。料理は表現だ、芸術だ。愛の言葉を何年も人々が探しているように、誰かを思い描き自分の技量を尽くしてつくられた料理が並んでいた。見るだけで伝わってくる。「香りをお楽しみください」とよく言われるが、目でも楽しめるものだったとは。いや、楽しいだけじゃない。迸る情熱を感じる、皿の向こうに誰かが見える。ああ、プロだなぁと思った。自分の自炊と比較するのもおこがましい話だが、自炊の向こうには誰の顔も見えない。だけど、並んだ作品の向こうにはきっと楽しみにしているであろう誰かの顔が見える。誰かのための料理である。

 

  ひと通り見てから学校を出て、私は二年間で何か得られたか自問自答せざるを得なかった。その後、先述した子とはまったく連絡をとっておらず特に仲が良かったわけでもないのだが、思わず感想を述べる旨のDMを送ってしまった。彼女は驚きながらも思いのほか喜んでくれた。今度はぜひ職場に来て!とのことだった。

 

 

 

  頑張んなきゃな、ととりあえず決意を新たにしてここに記している。髪切ったって変わりゃしないのだ。

 

 

"すべてを吹き飛ばせなくても 春  僕は目の前の春をゆく"